3.退去時の「立会い」は何のためにあるのか
退去時の立会いは、お部屋の使用状況の確認によって、主に敷金の精算のために行われます。
部屋の契約時に納めた敷金は、もしものことがあったときの保証金のようなものです。
家賃の滞納や入居中に部屋の欠損があった場合などに、敷金からお金が補填されることになります。
また、敷金は退去時の部屋の修繕にも使われます。ただし、どこまでの修繕を敷金から補填するかは、あらかじめ決められているわけではありません。
そのため、退去時の立会いで部屋の状態を確認して、貸主と借主のどちらが修繕費用を負担するかを決める作業が必要となります。
退去時の立会いは引越し作業が終わったあと、部屋に何もなくなった状態で行われるのが一般的です。
部屋の使い方が粗い場合は、立会い作業は30分以上かかることもあり、長引くと新居への引越しが遅れてしまうこともあります。
速やかに立会いを済ませるためにも、前もって引越しの終了時間を確認して連絡しておくようにしましょう。
また、自分の費用負担を減らすためには、立会い時は部屋をなるべくきれいな状態にしておきたいところです。引越し前や作業直後に簡単な掃除をしておき、部屋ができるだけきれいに見えるようにしておくと良いでしょう。
退去時の立会いでは、部屋にある傷や汚れがくまなくチェックされます。ただ、目に見える汚れや傷があっても、それが自分の責任でついたものでなければ、修繕する義務もこちら側にはありません。
その傷や汚れがいつからあったものなのか、またどういう経緯でついたものなのか、聞かれたらなるべく詳細に答えられるようにしておきましょう。
逆に言えば、その賃貸マンションに住んだ時に、すでに傷などがあった場合は、家主や不動産管理会社に必ず伝え、写真なども残しておくと、トラブル防止になります。
部屋の状態チェックが終わったら、鍵の返却をして立会いは終了となります。
4.知っておきたい退去費用の精算でもめないコツ
退去後に部屋を修繕して入居前の状態に戻すことを原状回復といいます。原状回復は貸主と借主のあいだで大きなトラブルに発展するケースも少なくありません。
そのため、原状回復の義務が借主側にどこまであるのか、自分でもしっかり確認しておくことがトラブルの予防につながります。たとえ部屋に傷や汚れがあったとしても、それらが経年劣化や通常消耗で生じたものなら借主側に原状回復の義務はありません。
一方、故意や過失、また通常の範囲を超えるような使い方をした結果、ついてしまった傷や汚れに関しては、借主に原状回復の責任が生じます。
たとえば、冷蔵庫の下にできた汚れや跡は、通常の使用によって生じたものであると考えられるため、借主が原状回復をする必要はありません。
しかし、同じ冷蔵庫の下の汚れでも、故障した冷蔵庫を長年放置した結果、水漏れで腐食してしまったようなケースは、借主の責任で修繕しなければならないでしょう。
このように、同じような汚れでも、汚れがついた経緯などによって、費用負担の責任は変わってきます。もし、借主に責任があると見なされれば、入居時に納めた保証金や敷金から修繕費用が補填されるため、退去時に敷金を返還してもらえないこともあり、破損がひどい場合は、それ以上の費用請求をされることもあります。
原状回復の問題は線引きが難しく、時には自分に責任のない傷や汚れまで修繕費用を請求されるケースもないとは言えません。
従って、日ごろから部屋をきれいに使うのはもちろん、もし部屋のどこかに傷や汚れを発見したら、それがいつ付いたものなのかを確認し、借りる前のものであれば、速やかに家主や不動産会社に報告し、修繕依頼をするか、そのまま住むのに影響がない場合は、貸し手側にもともとあった傷であることを認識してもらうことが重要です。
5.知識を持っておけばトラブルは未然に防げる
退去費用のトラブルは決して珍しいことではありません。特に、引っ越しが決まってしまうと、借り手側は、次に住むところに心が向いてしまうため、退去手続きをおろそかにして、思わぬ出費となる場合もあります。
とりわけ、原状回復の問題は、少し複雑な側面もあります。最後に嫌な思いをしないためにも、部屋に入居する前から退去についての知識をつけておきましょう。
しっかり準備して知識を持っておけば、トラブルを未然に防ぐこともできるはずです。